組織におけるAIの能力をどのように評価すべきか?

単なるツール使用ではなく、本物のAI活用能力を測定する3つの方法
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Sep 02, 2025
組織におけるAIの能力をどのように評価すべきか?
「AIをうまく活用する」とは、正確にはどのような意味でしょうか?
それは、単にいくつかのAIツールの操作方法を知っているだけではありません。実際の状況に合わせてAIを活用し、その結果を評価・分析できる力を持っていなければなりません。さらに、日々進化し続けるAI技術に積極的に取り組み、継続的に学習する姿勢も求められます。つまり、AI技術を理解し、批判的に思考し、協働プロセスにAIを統合できる能力を備えたとき、初めて「AIをうまく活用している」と言えるのです
ここで問題となるのは、「自社の社員がAIをうまく活用できているか」を正しく測定する方法が不足している場合が多いことです。組織内で自己申告式のアンケートを実施しても、その結果の信頼性は必然的に低くなります。一方で、AIツールの使用頻度だけで能力を判断するのも、職務ごとに状況が異なるため限界があります。
この課題を解決するため、近年世界ではAIリテラシー(AI活用能力)を、より精緻で体系的に測定しようとする試みが活発化しています。特に2023年以降、信頼性と妥当性を兼ね備えた学術的なAI能力評価フレームワークが数多く登場しています。 ここでは代表的な3つのモデル ― AICOS、MAILS、A-Factor Model ― を紹介します。これらはいずれも、技術的なスキルに加え、感受性や創造性、協働力といった側面まで含めて、AI活用力を多角的に診断するツールとして注目されています。

[1] AICOS、信頼性の高いAI能力評価尺度

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AICOS(AI Competency Objective Scale)は、2025年にドイツのビュルツブルク大学で開発された、AI活用能力を客観的に測定するためのツールです。学術的に厳格に設計され、検証まで完了しているため、信頼性と妥当性を両立したフレームワークとなっています。
AICOSは合計51問で構成されており、実務で活用しやすい18問で構成された短縮版も備えています。選択式テスト形式のため、自己申告による偏りが少なく、精度の高いAIリテラシー測定が可能です。何より職務や学習背景に依存せず、全社的に活用できる基本診断ツールである点が特徴です。
AICOSは次の6つの下位尺度に基づいて評価を行います。
1️⃣ AI活用力(Apply AI)
与えられたAIツールや機能を実際の業務や問題解決に適用できる能力です。単なるAIの使用ではなく、業務に適用する実践的な能力に焦点を当てて評価します。
2️⃣ AI生成・設計力(Create AI)
AIモデルを直接作成したり、既存のAIを調整・構成する能力を指します。生成型AIだけでなく、AIシステムの調整を含む実務などの状況に合わせてカスタマイズできる能力です。
3️⃣ AI識別力(Detect AI)
AIがどこで、どのように使用されているかを認識し、区別する能力です。テキスト、画像などの多様なコンテンツにAIが使用されているかどうかを判断する能力なども含まれます。
4️⃣ 倫理と判断力(Ethics AI)
AIの偏り、責任、法的/倫理的課題に対する認識と対応能力を指します。AI使用に伴う責任、公平性、リスクを認識していることが求められます。
5️⃣AIの概念理解能力(Understanding AI)
AIの基本的な動作原理、構造、限界点に関する概念的な理解を指します。
6️⃣ 生成AIリテラシー(Generative AI Literacy)
生成AIツールに対するリテラシーを指します。ChatGPTなどの生成AIの活用を重視した実践的な能力であり、適切なプロンプトの使用、結果の評価、創造的な活用などが含まれます。

[2] MAILS、AIを適切に扱う力を測定

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MAILS(Meta AI Literacy Scaleは、2023年に開発された自己報告型のAIリテラシー測定ツールです。
MAILSの特徴は、単に技術的スキルを測るだけでなく、心理的・メタ認知的側面まで含め、多角的に「AIを適切に扱える人」の特性を評価する点にあります。AIの結果を批判的に捉える力や、変化に対応する自己効力感など、人間中心のAI活用能力を総合的に診断します。
評価は6つの下位尺度、合計34項目(短縮版は10項目)で行われます。
1️⃣ AI理解力(AI Understanding)
AI技術の原理、限界、誤りの可能性などに関する概念的な理解を指します。基本的なAIは人間が作成したアルゴリズムに従って動作することを理解し、AIが常に正確な結果を提供するわけではないことを認識していることが重要です。
2️⃣ 活用態度(AI Usage Attitude)
AIに対する興味、受容性、有用性に関する認識です。AIは自分の業務や能力を向上させるツールであるという認識を指します。
3️⃣ 倫理意識(Ethical Awareness)
AIの公平性、偏り、透明性に対する感度と認識を指します。AIの判断に人間の偏見が介入する可能性を深く認識している状態です。
4️⃣ 自己効力感(Self-efficacy)
AIを使用したり学習したりできるという確信を指します。
5️⃣ 感情調節力 (Emotion Regulation)
AIに関連する不安やストレスに対する感情調節能力を指します。AIの変化に不安を感じつつも、適応できるという力です。
6️⃣ 自己主導学習力 (Self-competence)
AIに関する情報を自ら探求・学習する能動的な態度です。

[3] A-Factor Model、AI活用に不可欠なソフトスキル評価

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A-Factor Modelにおける「A-Factor」とは、AIと協働しながら課題を遂行する際に必要な心理的能力を指します。生成AI時代における人間とAIの協業を前提に、創造的・分析的能力を測定するために開発されたモデルです。企画、マーケティング、教育、リーダー層などに特に適しています。
実際のAI活用課題を基盤とした18問で構成されており、単なるアンケートではなく実務的な評価が可能です。
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A-Factor Modelの質問例
  • 「AIツールを活用して、与えられた問題に対する3つの代替案を考案してください」
  • 「AIが作成した報告書の下書きの誤りや非論理的な部分を指摘してください」
  • 「協業シナリオを構成し、その過程でAIが果たす役割を具体化してください」
A-Factorは次の4つの能力を評価します。
  • コミュニケーション力(Communication Effectiveness)
代表的な例として、プロンプト作成能力が挙げられます。
  • 創造的なアイデア生成力(Creative Idea Generation)
AIをツールとして活用し、アイデアを探索・拡張する創造性を指します。ブレインストーミング、シナリオ企画、代替案の生成などが含まれます。
  • コンテンツ評価力(Content Evaluation)
AIが生成した結果を批判的に思考し判断する能力を指します。AIの回答を検証し正確性と偏りを判断するだけでなく、活用可能性まで評価する能力を含みます。
  • 協働実行力(Step-by-step Collaboration)
AIと共に問題を定義し、段階的に解決する実行能力です。作業を細分化し、フィードバックと修正を繰り返し、共通の目標を達成する能力です。

私たちの組織は、どこから始めればよいのか?

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AI活用能力は、現在すべての職種、いまやすべての組織にとって必須の基礎力となっています。ただし、その内容は単なるツール操作にとどまらず、技術理解、感情的受容性、創造的協働力など、多面的な能力を含みます。だからこそ、組織として計画的に育成することが重要です。
とはいえ、具体的にどこから取り組むべきか迷う企業も少なくありません。まずは自社に求められるAI活用力を整理し、社員が日々の業務でAIを実際に使えるようにする研修や教育の場を整えることが第一歩となります。
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実際に、スパルタの生成AI研修を受講して2ヶ月以上経過した受講者アンケートでは、受講前は「ほぼ使わない」と答えた社員の多くが、現在では「日常的に使う(週1〜5回程度)」と回答しており、学習が確実に日々の業務行動に変化をもたらしていることが確認されています。
チームスパルタでは、これまで数多くの企業向けDX/AI教育を提供してきた経験をもとに、現場で「本当に活用できる」生成AI教育プログラムを設計・実施しています。もし「社員の生成AI活用スキルを高めたいが、どのように進めればよいか知りたい」とお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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